「華やかですね」

辺りを見渡しながら頬を緩めるリルに、オリバーは「そうじゃのう」と頷いた。

「王都は特に王族のことを身近に感じて暮らしておるからのう。王都の民はみなリコリス王女のことをお慕い申しておるのじゃよ」

いつもリルに厳しいオリバーだが、いつになく穏やかな顔をして答える。

「リコリス王女は民に優しく凛として、美しいお方。お生まれになった時からずっとその成長を見続けておるからじゃろうか、民にとっては孫娘のようにも思えるのじゃ」

国民の孫娘。それを聞いたリルはなるほどと思った。

王都のこの盛り上がりは、ただ王族の誕生日だからというだけではない。

みな王女が好きなのだ。

もう一度街を見渡すと、王女の生誕を祝ってかピンクや赤、黄色など可愛らしい色の花や装飾でいっぱいだった。

できるなら、この色彩豊かな街を王女にもぜひ見て、歩いて、触れてほしい。王女を祝うためにみなが準備しているのだ。

王女が見たらどんな風に思うのだろう。王女は今なにをしているのだろう。

まだ見ぬ王国の姫がいる王城を見つめてリルは思いを馳せた。


しばらく王都の中心に向かって歩いていると、どんどん王城が近づいてくる。

そしてオリバーが「ここでいい」と言って足をとめ、リルはそれを見上げて思った。


「…大きい」


今までに見たことのないくらいに大きな建物だった。