ふたりで自然と足をとめた。

そこは、近所の人しか来ないような、小さな公園だ。

もう少し歩いた先に、ここより遊具が多く、広場まであって利用者の多い公園があることもあり、予想どおり誰もいない。



「ここに来たの、久しぶりだね」

「うん」



静かに視線を這わせる彼といると、時間が流れていくのがもったいなく感じられる。

惜しいなぁと思いつつも、でも、それももうおしまいだ。



昔はお母さんが座っていたベンチにまっすぐ足を進めて腰をおろす。

ブランコ、滑り台、シーソー。

古びた、ペンキのはげかかっているそれらすべての遊具がここからは見えた。



未来の晴樹はすべり台にもたれかかるようにして腕を組み、こちらからは顔をわずかにそらしている。

夕陽に透ける彼はなんて綺麗なんだろうか。



私の行動を真似るように現在の晴樹も隣に座った。

どうかしたの? と彼は丸い瞳で私を捕まえた。



「なにか話でもあるの?」



察しのいい人はいやだ。

私がためらっていることに気づいたその上で、柔らかな空気で包むように話を促す。

言葉を選ぶ余裕も、誤魔化す暇も与えられず、焦りは募るばかりだ。



……いっそのこと、今この瞬間で、時がとまってしまえばいい。

終わらないまま、この恋を。



ああ、だけど、だめだ。

それじゃあ彼は未来でいなくなってしまったまま。

晴樹が、死んでしまう。



だから。



「私たち、別れよう」