はあ……と気のない返事を返せば、前を見据えたままの私の顔を晴樹はのぞきこむ。



「実莉、なにか勘違いしてるんじゃない?
俺が嬉しいのは、実莉が家から出ていることじゃなくて、誰かと会うためにってところだよ」



綺麗な晴樹の肌が視界の邪魔で、眉間にしわを寄せたところで予想外な言葉。

ぱちぱちとまばたきをして、きちんと彼の顔を見る。



「俺の15の夏は、今みたいに幸せなものじゃなかった。
実莉は前の年と同じようにひとりでいることを望んだし、今でも誰かに会うために出かけるなんてことはしない」



なんてことだろう。

知らないうちに、未来の晴樹の記憶と一致しない行動をしていたなんて。



ああ、だけどつまり、晴樹にとって過去の、私にとって現在のことが変化しているのなら。

それは未来が変わるということだ。



そのことに驚くと同時に、未来の晴樹の過去はどんなものだったのか、知りたいと思った。



「聞いてもいい?」

「ん?」

「変わったこととか、未来の晴樹の知ってることを教えて欲しい」



誕生日の時にも思ったけど、私は未来の晴樹について知らないことがたくさんある。



未来の晴樹が他の人には見えない、なにも触れられない……それくらいしか私は未来の晴樹の状況を説明できない。

だからこそ、知りたいと思う。