――次の日。

結局昨日は家には戻らなかった。

泣きはらした顔で、でも何とか平静を保ちつつ定時まで仕事をこなして会社を出ると、そのまま近くのネカフェに行って夜を明かした。

智樹は私がいる間、オフィスには戻ってくることはなく、顔を合わせないまま。

河合さんは智樹に少し怒っていて、私には腫物に障るように気を遣ってくれて。
それが余計辛かったけれど、なんとか堪えて普段通りの仕事をした。

智樹の仕事が終わった時間からは、メールや電話がひっきりなしにかかって来ていたけど、見るのも出るのも嫌になって電源を落とした。


ネカフェの小さなスペースに置かれたリクライニングシートに横になって、ただひたすら声を押し殺して泣き続けた。

そしていつの間にか意識を手放していて、気が付けば朝になっていて……。


トイレにある鏡に顔を映して、あまりの酷い顔にびっくりして。

ネカフェのコインシャワーで冷たい水を浴びて、少しでもスッキリしようと試みたりしたけど、顔も心もスッキリするはずもなく。

腫れもひかないままに、沙織たちとの飲み会の時間が近付いていた。


「飲み会、どうしよう……」

服も昨日のまま。
顔も腫れてひどい状態に加えて、化粧しようにも最低限のものしかバッグに入れてない。

気分的には飲み会をするような状態じゃなかった。


だけど、多分このままひとりでいたら、ただ泣くだけで辛いだけ。
どうせ泣くなら、沙織たちに話を聞いてもらって泣いた方が気持ちが楽になるかもしれない。

そう考えて、飲み会の場所へと向かう事にした。