「……」


携帯のディスプレイを見て、ため息を零す。


智樹と一緒に暮らすようになって、2週間が経つ。

毎日が楽しくて幸せで、それ自体は特に問題はなかったけど、ある事で心配がひとつあった。


それは、履歴に並ぶ非通知。
毎日必ず一回、電話が掛かって来ていた。

その電話はいつも出られない仕事中か、夜中寝ている時間にあった。


だから不在着信ばかりが履歴に溜まっている。


嫌な予感がした。
もしかして、という思いが拭えない。


ううん。
もしかしてじゃなく、多分掛けてきているのはアイツだと確信する。


せっかく智樹と新しい生活を始めて、傷も癒えてきているのに。
前向きに自分の幸せに向かって、歩んでいこうとしているのに。

あっちだって、あの女とまだ繋がっているんでしょ?


なのに今更なんで電話なんてしてくるのか、理解が出来ない。

もうほっといて欲しい。
お互いそれぞれの道を歩んでいく、それでいいじゃないの。

なのに、どうして……。



「具合でも悪いのか?顔色が優れないようだけど」

智樹に声を掛けられ、ハッと我に返った。
どうやら心配されるほど、私の表情は曇っていたらしい。


「う、ううん。大丈夫、具合悪くないよ!心配してくれてありがとう」

私は慌ててそう返した。


智樹に話せば、きっと助けてくれるだろうと思う。
でもこれ以上、智樹に圭悟の事で重荷を増やすのは良くないと考えていた。


これから先は私自身が強くなって、自分ひとりで解決していかなきゃいけない。

今まで散々私を助けてくれて、心強い言葉をくれたから。


これは私の問題。

ここを乗り越えたら、本当の穏やかな生活が待っている。


そう思って、智樹には非通知の事を話さずにいた。