「あの、先輩」

「ん?」

「先輩は彼女とかいないんですか?もしいたとしたら、私とふたりで飲みなんて、なんか彼女さんに申し訳なく思ってしまって」

後でふたりで行ったことがバレたりしたら、彼女に申し訳がない。
やましいことは何もないけれど、誤解だけでもとても傷付いてしまうから。

そう思って先輩に聞いた。
その問いに先輩は笑いながら答える。

「何?そんなこと気にしてたの?今はいないよ、思いっきりフリー。だから大丈夫」

「そ、そうなんですか。先輩格好いいからてっきりいるもんだと……」

「お、そう言ってくれるのはありがたいね。昔はモテてたけど、でも社会人になったらめっきりモテなくなっちゃったな。……それより京香ちゃんこそ大丈夫なの?俺とふたりきりで飲みに行って」


まさかそう返されるとは思わなかった。

私なんてそんなに彼氏がいた方じゃないし。
ましてや離婚したてのほやほやだし。


「いえ、私こそフリーですから。全然問題ないです」

「ってかさ、どうして派遣で働いてるの?京香ちゃんだったらちゃんと正社員で働けるはずなのに」

「ま、まあ。ちょっと色々とありまして」

「色々ってなに?」

先輩はその理由を聞きたそうに、私を見ている。

言わないでおこうと思っていたけど、そんな目で見られると……。




「……です」

「え?」

「その、離婚、したんです」


その言葉に先輩が固まった。