――まさかこんな事になるなんて、思ってもみなかったんだ。


京香とは会社の取引先で働いていて、その時に出会った。

最初は事務的な会話を交わすだけ。

そのうちに徐々にたわいのない話をするようになって、それからお互いの連絡先を交換。
そして、急激に仲良くなり付き合い始めた。


三年の交際期間を経て、夜景の見えるレストランでプロポーズ。

いささかベタなシチュエーションで、正直引かれないか不安だったが、京香は涙をボロボロ流して喜んでくれて。


『これから幸せな家庭を築こうな』って、お互い笑い合った。


初めて見る婚姻届は書く手が震えてしまって、京香に笑われてしまったけど、もう一生書く事ないんだって思ったら、そりゃ緊張するだろ?


俺がちょっとふて腐れると、ごめんごめんって俺を抱きしめてくれてさ。

京香の温もりと優しさが染みて。

ああ、幸せだなって、そう実感したんだ。



これからは何があっても京香を、これから増えるであろう家族を守っていく。



その時は、そう決意して、新しい一歩を踏み出したと思っていた。