結婚も2度目だからこそ!

演奏会は大盛況のうちに幕を閉じた。

自分のソロ曲も思った以上に上手く吹くことが出来て、達成感と充実感が身体中を駆け巡る。

これこれ。
この感覚。

練習も、吹く直前の緊張も、逃げ出したいくらい苦しいものだけど、それを乗り越えた先に待つ、吹いた者にしか分からないこの感覚が忘れられなくて、俺は楽器をやめられない。

今日の打ち上げのビールは、至極のものだろう。


……と、その前に。

この会場に来ているであろう、京香に会いたい。


本番終了後、舞台撤収をしながら俺は京香に連絡しようと思っていた。
でもその連絡は必要なかった。

客席に目を向けると、ただひとり座ったまま動かない女性。
遠くてもその人が京香だとすぐにわかった。

京香の下へと駆け寄る。
京香はぼおっとした表情で、周りが見えてないようだった。

「――京香ちゃん?」

その呼びかけに、ようやく京香は俺の方に目線を向けた。

「……あ、先輩」

「どうしたの?人が捌けてもずっと座ってるから、心配して来ちゃった」

「見てたんですか?」

「遠くからでも京香ちゃんって分かるから」

俺がそう言うと、京香は少し照れたようで顔を赤らめる。
その表情がまた俺の心をうるさくさせた。

けれど、なんか京香の雰囲気がおかしい。
心ここにあらずで、動揺しているように見える。


――何かあったのだろうか?

しかし、今それを聞く時間はない。
そう思った俺は、京香をお茶に誘った。

京香は誘いを快く受け入れてくれて、俺はロビーで待つように言うと、急いで片付けに戻る。