結婚も2度目だからこそ!

――思い出してくれた。

俺の名前を京香の口から発せられたことに、ようやく安堵する。
一瞬で不安な気持ちは消え失せ、思わず笑った。

「おお、そうだよ、吉岡先輩だよ。ようやく思い出してくれたか」

京香はその後、忘れていたことに対して謝ってくれた。

まさかこの会社に俺がいるとは微塵にも思わなかったらしい。
てっきりプロの奏者になっているものだと思っていたそうだ。

部活を引退してしまえば、ほとんど接点はなくなる。
その後俺がどういった道を辿ってきたのか、その時1年だった京香には知る由もない。

もちろん、俺も京香が今日までどんな人生を歩んで来たのかも、分かるわけがない。


たわいのない話をしている中で、俺は京香のことが知りたくなった。
もう少し話をしたいと思っていた。

けど、昼休みの時間は刻々と過ぎていく。

俺もさることながら、京香だって昼飯を食べていない。
ましてや京香はこの会社に入って初日だ。

ただでさえ気を張って仕事をしているだろう。昼飯抜きで午後の仕事なんて酷すぎる。


「あ、そうだ、京香ちゃん。じゃあ今日仕事終わったら飲みに行かない?せっかくこうやって再会できたんだし、それのお祝いってことでさ。ゆっくりと話もしたいし。もちろん奢る。どう?」


去り際、俺は京香を飲みに誘った。

「い、いいんですか?私凄く飲んじゃいますけど」

京香は嫌な顔をせずに答えてくれる。
それが俺は物凄く嬉しかった。

「お、いいね。じゃ、決まり。俺も今日は定時で仕事終わらせるように頑張るから。もし終わらなそうでも何とか早く切り上げるからさ、終わったら一階のロビーで待っててくれる?」

「は、はい!分かりました。けど、あまり無理しないで下さいね」


「サンキュー。その言葉だけで頑張れそう」



その言葉は嘘じゃなかった。


"早く京香とふたりで話がしたい"


その一心で必死にパソコンのモニターに食らいつく。

結果、自分でも驚くぐらいのハイペースで、終わらせることが出来たのだった。