「――嘘だろ……」
その光景を見て、俺はぽつりとつぶやく。
それは急な休日出勤を終え、家へ帰ろうと駅に向かう途中だった。
視線の先に見慣れた人の姿。
近々次のステップへと、共に進もうとしていた、俺の愛しい人。
休日出勤をしていた俺を待って駅で待っている、それだったらどれだけ良かっただろう。
彼女は、別な男と腕を絡めて歩いている。
しかもとても幸せそうに。
身体の力が抜けて、持っていたカバンを落としてしまった。
カバンは足の上に当たって、その衝撃で中身が足元に広がる。
けど、それをすぐには拾うことが出来なかった。
周りにいた何人かの人が、拾って声を掛けてくれたけど、それに対して空返事しかすることが出来ず……。
そこからの何日かは、あまりのショックに記憶が定かじゃない。
うっすらと覚えているのは、彼女がいなくなったことへの喪失感と裏切られたという絶望感だけ。
彼女別れてからの三か月間は、自分の精神状態はひどくボロボロで、趣味のトランペットすら吹けなかった。
別れた彼女が同じ会社にいるというのも物凄く嫌で、仕事も身に入らない。
それでも時が過ぎれば、少しずつだけど気持ちの整理がついていく。
本当に徐々にだけれど、彼女のことを忘れていくようになっていた。
――そんな時に会ったのが京香。
だいぶ昔よりは垢抜けて綺麗になっていたけど、一目見て課長の隣に立つ人が京香だってすぐにわかった。
あまりの懐かしさに、紹介が終わって周りは仕事に戻っていたけど、俺は京香を見たまま動くことができなかった。
そんな俺を京香は訝し気な表情で見る。
それに気付いて、慌てて机に戻る。
こんなところで再会するなんて……。
記憶の隅に追いやられていた昔の思い出が、仕事中にも関わらず蘇って、なかなか集中出来なかった。
その光景を見て、俺はぽつりとつぶやく。
それは急な休日出勤を終え、家へ帰ろうと駅に向かう途中だった。
視線の先に見慣れた人の姿。
近々次のステップへと、共に進もうとしていた、俺の愛しい人。
休日出勤をしていた俺を待って駅で待っている、それだったらどれだけ良かっただろう。
彼女は、別な男と腕を絡めて歩いている。
しかもとても幸せそうに。
身体の力が抜けて、持っていたカバンを落としてしまった。
カバンは足の上に当たって、その衝撃で中身が足元に広がる。
けど、それをすぐには拾うことが出来なかった。
周りにいた何人かの人が、拾って声を掛けてくれたけど、それに対して空返事しかすることが出来ず……。
そこからの何日かは、あまりのショックに記憶が定かじゃない。
うっすらと覚えているのは、彼女がいなくなったことへの喪失感と裏切られたという絶望感だけ。
彼女別れてからの三か月間は、自分の精神状態はひどくボロボロで、趣味のトランペットすら吹けなかった。
別れた彼女が同じ会社にいるというのも物凄く嫌で、仕事も身に入らない。
それでも時が過ぎれば、少しずつだけど気持ちの整理がついていく。
本当に徐々にだけれど、彼女のことを忘れていくようになっていた。
――そんな時に会ったのが京香。
だいぶ昔よりは垢抜けて綺麗になっていたけど、一目見て課長の隣に立つ人が京香だってすぐにわかった。
あまりの懐かしさに、紹介が終わって周りは仕事に戻っていたけど、俺は京香を見たまま動くことができなかった。
そんな俺を京香は訝し気な表情で見る。
それに気付いて、慌てて机に戻る。
こんなところで再会するなんて……。
記憶の隅に追いやられていた昔の思い出が、仕事中にも関わらず蘇って、なかなか集中出来なかった。