けれど部活を引退してから、彼女とはそれっきり。


大学受験で恋愛どころじゃなくなってしまったし、いつの間にか彼女のことも部活でのいい思い出のひとつとして、頭の片隅に追いやられ、大学では人並みに別な女の子と付き合ったり別れたりを経験しながら、部活に励んでいた。


楽器は社会人になっても続け、地域にあるアマチュア楽団に入団。
仕事と両立しながら趣味で細々と続けていた。

正直高校のとき、音大に行こうと思ったこともあった。
けど、好きなものを仕事にするのがどうしても怖かった。

必ずやり続けていけば、大きな壁にぶち当たる。


その時に嫌いになってしまったら?


そう考えたら、恐ろしくてどうしても勇気が出なかった。

楽しいものは楽しいままで一生やっていくことが、自分にとってベストだと思って、大学も仕事も音楽とは全く関係のないものを選んだ。


今ではその考えが正解だったと思う。

仕事もプライベートも充実していて、何不自由なく生活できていたから。

入社時に一目惚れした同期ともつき合うことが出来て、仕事も認められることが多くなって、申し分ないくらいの毎日。


これからもそんな明るい毎日が続いていく、そう思っていた。