放課後部活に行こうと弓道場に向かって歩いている途中で言い争う男女の声が聞こえてきた。



ここを通らなければ弓道場に行けないのに…困ったなぁ。



でもそこに近づくに連れて大きくなっていくその声にとても聞き覚えがあることに気付く。



この声………千尋先輩と高梨先輩だ。



僕は咄嗟に近くに隠れた。



「人の話聞いてた?何もないって言ってるでしょ!!人を疑う前に自分はどうなのよ。」



「人の心は自分の意に反して変わっていくんだからわからないよ。」



「何よ、それ。恭の心はもう私にはないってこと?だったらもう別れよう。」



「なんでそうなるんだよ。俺はずっと千尋だけ好きなんだよ。」



別れ話まで出てきているところから見て千尋先輩は相当怒ってらっしゃるみたい。



でも高梨先輩は他の女の子と遊んでるって聞いてたからこんな必死になって別れを阻止しようとしているのは本当に千尋先輩が大切なんだとわかる。



でも心の奥底で少しだけこのまま別れちゃえば僕にもチャンスがあるかなと思ったのは秘密。



しばらく続いた言い争いはチャイムがなった事で終わりを告げた。



普段はこんな時間にはならないから少し驚いたけど今の僕にとってはありがたかった。



高梨先輩は逆方向に向かって歩き出したけど千尋先輩はこっちにくる。




そう気づいた時には遅くて………。