綺麗に片づいた自分の部屋に、少し違和感を覚える。



いつもは教科書や参考書が散らばった机もきちんと整頓してある。



昨日、部活が終わるとせっせと掃除をしたのだ。



汚い部屋に先輩は呼べないからね。



って、わざわざ僕の部屋に呼ぶ必要あった!?



家には誰もいないし、猫を見に来たんだらリビングに通せば良かったんじゃ・・・。



そんなことに気づいたが、今更もう遅い。



ベッドの前に置かれた小さなテーブルにトレーを置くと先輩を見た。



どこから出てきたのか、我が家の愛猫の「しらたま」を撫でまくっていた。



いつもは僕が呼んでも隠れて出てこない癖に・・・。



オス猫なだけに、綺麗な先輩に誘われて出てきたのかもしれない。



撫でられて気持ち良さそうにしているしらたまが、時折こちらを見る目に少しイラついた。



ひと通り撫で終えると、先輩はしらたまを膝の上に乗せた。



そして、コップに注がれた紅茶を一口飲んだ。



先輩の膝の上で、気持ち良さそうに目を瞑るしらたま。


羨ましい。


「あのね、和くん」



「はい」



「私達って、恋人同士なのよね」



「勿論!」


僕は躊躇うことなく答えた。


「だから、せめてふたりだけの時でも先輩って呼び方も、敬語もやめて欲しいな。堅苦しくない?」



「確かに。はい、分かりましたです」



「・・・やっぱり和くんはそのままでいて?」



「ん?はい」



先輩の考えていることがよく分からなくて、首をかしげた。



「今、とても心地が良いのよ。恭と居た時の不安定な気持ちとは全然違う・・・」



高梨先輩の名前が出てきて、少しモヤッとした。



「ふたりだけの時に、高梨先輩の名前は出さないで欲しいです・・・」



「あっ。ご、ごめんね?」



先輩は、慌てて謝った。



「僕格好よくないし、頼りないし、嫉妬深いけど、先輩を好きな気持ちは誰にも負けないです」



「和くんは格好良いよ。私のこと助けてくれたじゃない。あと、頼りにもなる」




「っ・・・」




「それとね?私だって、和くんを好きな気持ちは誰にも負けない」




「和くん、顔真っ赤」と言って笑った。




や、やられた・・・。