「なあ、お前が好きなのは俺だろ?」

「……」

…あれ?



「…おいーー」
「いやっ!!!」

なんで。

「…はっ?千尋?」

…なんで、



「…ずく、っ。

和くんっ!!!」


ーーなんで今、恭じゃなくて君の顔が浮かんだんだろう。


「千尋、お前ふざけんなよ?!」

付き合ってるのは、恭なのに…。

「先輩…っ」

好きなのは、和くん…?



ーー 分かんないよ。



「先輩っ!!!」



大好きな、落ち着く声が聞こえたとともに
私は意識を手放した。


ーーーー
ーー




「…」

目が覚めた私は、ベットに寝かされていて。

多分、保健室だろう。



ぼー、と恭に掴まれて赤くなった手首を見つめる。


ーー お前が好きなのは俺だろ?


自信満々な表情(かお)でそう言った恭。

前なら、すぐに”好き”と答えられたのに。



…言えなかった。

その代わりに、勝手に口は和くんを呼んでいて。



自分の気持ちが分からない。




シャッ、とベットを囲むカーテンが開かれた。

目をやるとーー和くん。


「あ、先輩!!大丈夫?どこか痛いところとか…」


私が起きていることに気づいた和くんは私の元へと駆け寄って尋ねる。


「大丈夫よ。」


そう微笑めば、「良かった!」なんて言って君も微笑む。


その笑顔がなぜか心地よくて。



その時は私の気持ちがもう、
君に傾いているなんて気付いていなかった。