放課後、部室前で先輩を待っていた。


今日は先生の都合で午後の部活は休み。



なので、部活もない。先輩と帰れる。


こんなこと、有頂天にならないはずがない。


だから、僕はすっかり忘れていた。千尋先輩が女子たちに呼び出されることになった元凶のことを。



掃除の時間はとっくに終わっているはずなのに、先輩が来る気配が感じられない。


何度腕時計を見ただろう。もう、来てもおかしくないのに。



まさか、また、呼び出しでもされているのだろうか。脳裏にそんなことが過った。


いてもたってもいられなくなった僕は、急いで先輩の教室へと向かうことにした。



でも、それが僕にとって「ラッキーデー」の終わりを告げることになるなんてそのときは気づきもしなかった。



靴を履き替えて、先輩の教室へと足を進める。


教室にいるのかな。先輩の教室にたどり着いたけれど、人のいる気配が感じられない。


じゃあ、先輩はどこに?焦って走り回ってみたけれど、先輩はどこにもいない。


まさか、もう帰ってしまったのかな。さっきまでの気持ちが一気に落ちてしまった。



そんな風にトボトボと廊下を歩いているとどこからともなく聞こえてくる声。


デジャブだ。前にもこんな場面に出くわした。


千尋先輩と、彼氏である高梨先輩のやりとり。



僕は、その声がする教室をこっそりと覗き見した。やっぱり、間違いない。


千尋先輩と高梨先輩だ。