せっかく勇気を出して手を掴んだのに当の先輩はそんなこと気にも止めていない。


僕って本当に男として意識されていないんだな。



さっきまで掴んでいた先輩の手は、ここに入るときに離してしまった。


あんなに近い距離だったのに今はもう部室内を見回す先輩の後ろ姿をポツンと見ているだけ。



「・・・ありがとね。まさか、君が助けてくれるとは思わなかったわ」



「えっ?」



「嬉しかった、まあ予め、ある程度の時間が来たらアラームが鳴る設定にはしていたんだけど、やっぱり助けてもらえると素直に嬉しい」



呼び出しは慣れているから。振り向いて、先輩は言葉の後にそう告げた。


そっか。だから呼び出しにも素直に応じて、対処法も自分なりに考えていたんだな。



「でも、情けない助け方でしたけどね」



「正直、君って部活内でも可愛がられているじゃない?その可愛らしい外見といじられキャラで。でも、さっき少しだけ男らしいと思ったのよ」



「ほ、本当ですか?本当に?」



先輩は本当よと言ってまた僕に背中を向けてしまった。


今までこの外見からか可愛いとかワンコっぽいとかそんなことばかり言われていたけど、男らしいって。


しかもそれを千尋先輩に言われるなんて。



やっぱり今日の僕はラッキーデーだ!