柚side





「───どういうことなんだよそれは!!」



恭ちゃんの怒号が響き渡るなか、マスター棟の空気は騒然としていた。


いつも通りの時間に中央エントランスまで集まった中に、カノちゃんがいなかったから。


そしてそれを平然と「早朝おひとりで出ていかれました」と報告した櫻井さんの胸元を掴みあげているのは、恭ちゃんではなく律の方だ。



「……説明してもらおうか」



あーあ、こりゃ相当怒ってるなー。


律ってばカノちゃんのことになると人が変わるんだから。


……まぁ、その気持ちもわからなくはないけどね。


口の中でコロコロといちごミルク味のキャンディを転がしながら、僕はユキちゃんの足にピッタリとくっついている日向に目をやる。


すぐにこちらに気づいた日向は、おろおろとしながら顔を伏せてしまった。


相変わらず、あんまり懐かれてはいないらしい。