【アク】

『均衡の鍵は手にした』

鍵がこちらにある以上、錠前はいつでも奪うことは出来る。

でも、簡単に錠前を奪うのもつまらいものだ。

もう少し、ゲームを楽しもうじゃないか。

「ねえアク、次は何をやる?」

『そうだな。もう少し、シアンには強くなってもらいたいからね。もう少し、ゲームを続けるよ』

俺は、膝の上に座るイヴの髪を撫でた。

『なぁイヴ、記憶の方は戻ったかな?』

「ううん。全然、そもそも昔の記憶があったのかすら分からない」

『そっか……』

俺は、目を細めてイヴを見下ろした。

『待っててねイヴ。君と一緒にいる世界を作るためにも、もう少し俺に付き合ってくれないか?』

「もちろん、私は最後までアクの傍にいるよ」

俺は、イヴを優しく抱きしめた。

たとえ、君が記憶をなくしていても、俺だけは覚えている。

君は、俺にとってかけがえのない存在だったんだから。

イヴのためにも、必ず錠前は奪う。

こんな、腐りきった世界を壊すためにもーー

『お兄様、連れてきたよ』

『ありがとう。ヴァニティ』

その為に、わざわざ妹を作ったんだ。

俺の為に働いてもらうよ。

ヴァニティの姿を見たイヴは、ジェネシスの中へと戻った。

そして、ヴァニティの後ろに続いて三人の妖精が入ってくる。

『さぁ、シアン。第3ラウンドと行こうか』

暗い闇のなか、俺の笑い声が響き渡った。







fairy3 空の物語 上(完)