【シアン】

『っ!』

私は、慌てて後ろを振り返った。

『シアン?どうした?』

私の様子に気がついたソレイユが聞いてくる。

『今……、嫌な力を感じたの…』

『嫌な力……?』

ソレイユは、目を閉じて気配を探り始める。

でも、私はこの力に心当たりがあった。

『まさか、この力……!』

『やっと気がついたのか?随分と遅かったな』

『っ!』

背後に気配を感じ振り返ろうとした時には既に遅く。

『そんなんで、俺と闘えるのか?』

強烈な拳が私の背中へと打ち込まれ、私の体はそのまま勢いよく地面に叩きつけられた。

「な、なに?!」

『シアンっ!』

土煙が辺りを舞う。

「し、シアン?!」

雪菜の叫ぶ声が聞こえる。

『かはっ……』

口から血が吐かれると共に、体中に激しい痛みが走った。

気配を完全に消して、私に一撃を与えられる力を持った妖精は、二人しかいない。

そして、この気配はその内の一人ーー

『グリード……』

私は、ゆっくりと立ち上がり上を睨みつけた。

『さすがだシアン。よく耐えたな』

グリードは、胸の前で腕を組んで浮いており、私を見下すような表情をしている。

ほんとあの顔苛つくわね……。

『シアン!大丈夫か?!』

『えぇ、大丈夫よ』

心配して寄ってきたソレイユに続いて、雪菜と愛斗も私の傍に駆けて来る。

「シアンっ!」

「あいつは、一体誰なんだ?!」

『強欲の妖精グリードよ。七つの大罪の長男にして、最強の男』

「さ、最強の男……」

私は、目を閉じて体の傷を癒す。

『素晴らしい回復力だな』

『こんな傷、アクのジェネシスなんかに比べたら軽い方なのよ』

『そうか?』

グリードは、ゆっくりと下りて来ると、そっと地面に足をついた。