楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


学級閉鎖最終日の午後、俺は野乃花を家の近くまで送ってきていた。


「ここでいいよ」


野乃花の家が見えたところで足を止めた。


男と一緒に帰ってきたところは見られたくないようだ。


「わかった」


「明日のバス旅行、楽しみだね」


野乃花がそう言い、笑顔を浮かべる。


しかしその笑顔はなんだか作り物っぽく見えて、本当に楽しみだと感じているのかどうか判断できなかった。


もしかしたら、無理に話題を探して帰る時間を遅らせているのかもしれない。


自分にとって都合のいい解釈をして、俺は「そうだな」と、頷いた。


「課題が全部できたのは聖也が教えてくれたからだよ」


そう言われて、俺は照れくさくなって野乃花から視線を外した。