秋奈の動きが止まった。

木刀を突き付けられた兄貴が数歩下がって、床に座り込む。

 …届いた…のか?

 さっきまでそれまでとは比べ物にならないくらい暴れまわっていた秋奈が、突きを放った格好のままで固まっている。

 すると、何の前触れもなく動き出した秋奈はゆっくりと木刀を下ろし、構えを解く。

そしてまっすぐ兄貴を見下ろした。

「私の勝ちですよね」

 静かに言い放った秋奈の言葉はまちがってはいないはずだ。

兄貴は片膝をつかせたらと言った。だけど、兄貴は片膝どころか腰を抜かしているようにも見える。

 兄貴が自分で提示した条件、それ以上の形を秋奈は兄貴に突き付けた。

 動けなくなるまで、というような勝ち負けではなく、秋奈と兄貴がケンカを始める前に突き付けた条件では勝敗がついているはずだ。

「まだ、勝ちではないですか」

 静かに兄貴に問いかける秋奈。

兄貴は何も言わないまま秋奈をじっと見つめている。