「夏樹は、元は紫炎のメンバーだ。それが、こいつ勝手に逃げ出して、キミのとこに転がり込んだってだけ。だから、返せって言うのは違うんじゃない?」

「ここが逃げ出すしかないような場所だったってだけでしょ。転がり込んだ先でも、夏樹はあんたたちが来るまで志季にいたんだ。だから、返して」

 銀髪の人の顔から偽りの笑顔が消える。

 鋭く睨みつけてくる目は冷たくて、気持ち悪い。

「へぇ、言うね…」

 恭也って人に視線を戻す。

 相変わらず殺しそうな目で私を睨みつけてくる。

「女、この状況分かってんのか」

「四方八方敵だらけってことは理解してますけど」

「なぜ夏樹にこだわる」

「なぜ?愚問だね。友達連れ戻すのに、理由なんかいらないでしょ」

 時間を稼がれてる?

 周囲を男たちが囲んでいくのは分かるけど、動きが遅い。

 薬漬けってところかな…。

「…っは、おもしれぇ。そんなに夏樹が欲しけりゃ、こいつら全員潰して俺のところまで来い」

「あなたに勝てば、夏樹を返してくれるってこと?」

「ッ秋奈!逃げ…」

 夏が何かを叫びかけた瞬間、小柄な子が後ろから夏の口を塞ぐ。

 そのまま倒れて見えなくなった夏の姿。

 小柄な子はニヤニヤしながらこっちを見下ろしてくる。