…来ちゃった。

 目の前にあるのは大きな廃倉庫。

 嫌な予感がむんむんするこの先に夏がいる。

 確信はなぜかあって、でも目の前の子の大きな外観で既に足がすくんでる。

 保くんにはちょっと意地悪しちゃったかな。

『…取引、しない?』

 持ちかけた私の言葉に保くんは首をかしげる。

『私の質問に1つだけ、答えてほしい。答えてくれたら、商店街の人たちに掛け合ってあげる』

『え?』

『どう?』

 保くんは、俺に答えられるならってすぐに返事を出してくれて、ごめんと思いながらも続ける。

『紫炎のたまり場を教えてほしい』

『え?…そんなの、知ってどうするんですか』

『保くん、答えてくれないなら、この話はなし。どうする?』

 追い打ちをかけるようにそんなことを言って、保くんは悩んでた。

 多分、私を心配してくれたんだと思う。

 自分だって大変なのに、私の心配までしてくれる、優しい子なんだ。