「…保くん、夏、なんて言ってた?」

「…紫炎が、汚い場所か分かってるのかとか、留まるなって…。秋奈さんなら、何とかしてくれるから、土下座してでも何とかしてもらえって。普通に生きてくには、それしかないからって」

 保くんにそんなこと言うくせに、夏はそこに留まってるって言うの?

 そんなめちゃくちゃなこと…。

「あ、あと、夏樹さんは、抜けたくても、逃げられないって」

「ッ…」

「紫炎の場所は分かってても、夏樹さんにあんだけ言われて、戻る勇気でなくて…」

「え?場所分かるの!?」

「は…はい」

 …夏。

 ゆっくり目を閉じて、息を整える。

「ねぇ、保くん」

「はい」

「…取引、しない?」