「何?」

「…お、お礼したい。から連絡先教えてほしい…」

「秋」

「…悪いけど、教えられるような連絡先はないから」

「でも…」

 男の手をぎゅっと握る。あの寂しそうな横顔を忘れられない。

 なんであんな顔をしていたのか、余計なお世話かもしれないけど、ほっとけなかったんだ。

 男の子はしばらく黙っていたけど、不意に口角が弧を描いて掴んでいた手を離され、逆に手首を掴まれて引き寄せられる。

 気づいた時には男の子が目の前にいて、妖艶に微笑む。

「そんなにお礼したいって言うなら、お望み通り応えてあげようか?」

「ッお前!」

「…いいよ」

 もう二度と会えなくなるなら、ちゃんとお礼しちゃいたいし。

 瞬はびっくりした顔をして、なぜか男の子までびっくりした顔してる。

 …なんで?

「な、バカ何言ってんだよ秋!!」

「え?」

「…へぇ、度胸あるんだ」

「てめぇ!本気にすんじゃねぇよ!!」

 瞬はなんで怒ってるの?男の子はなんで今にも吹き出しそうな顔してるの?