「で、なんで戻って来てるわけ?逃げろって言ったのに」

「あのままほっとけないよ!…あ、じゃなくて、助けてくれてありがとう」

 怒る前にお礼言わなきゃじゃん。

 頭を下げると、男の子が息を飲んだような気配がする。顔を少しだけ上げると目を見開いてた。

「…っは、何それ。言っただろ。あのケンカは俺がもらったって」

「で、でも…」

「そういうのいいから。ま、サツから逃げれたのは2人のおかげだから、これで貸し借りなしってことで」

 男の子はそっぽを向いてそっけなくそんなことを言う。

 それにしても…。さっきは薄暗くてよく見えなかったけど、男の子も傷だらけだ。

 殴られた跡も、擦り傷も、手当てしないままだから痛々しい。

「んじゃ、もう二度と会うこともないだろうけど、気を付けて帰れよ」

「ッ待って!」

 去って行こうとした男の子の手を咄嗟に掴んで止める。

 瞬が咎めるような視線を送って来たけど無視だ。男の子はめんどくさそうに振り返る。