きっと先生はあたしに気付いてないだろうから、少し距離を開けて先生が保健室に入ったのを見てから、教室に向かおうと後ろを見ると、先生が追いかけていた。
「…なんで!?」
あたし何かしたっけ!?
もしかして少し前まで纏わり付いてたのが彼女にバレて破局したとか!?
でも、あれは1ヶ月くらい前のことだったから。
角を曲がってどっかの資料置き場に入って鍵を閉める。
「…はぁ、はぁ…」
ドアに耳を押し付けて外の様子を伺えば、足音は段々と遠くなる。
そのことにホッとして鍵を開けて、出ようとすれば、それよりも先に目の前のドアが開けられた。
黒い影があたしの目の前に立っていて、恐る恐る顔を上げると無表情の先生がいた。
怖くてすぐに視線を下げたあたし。
「…せ、せんせー久しぶりですねー」
あははと笑いながら、どうやって逃げようかと考えていれば、
「本当に久しぶりですね」
背筋が凍るような低い声が頭上から聞こえた。
「俺はものすごくあなたと話したいことが…、」
そこで途切れた先生の言葉を不思議に思い、床を見ていた視線を先生の方に向ければ、先生はあたしの首元をガン見していた。
「そ、れは…」
「あー、いや別に大したことじゃなくて」
「ですが、包帯を巻いているじゃないですか」
「本当に平気なんですよ。
てか、先生には関係ないからいいじゃないですか」
視線を逸らしながら言えば、先生が小さく、「関係ない、ねぇ…」と呟いて、あたしの視線が一気に高くなった。
「ちょっ、先生!?」
「保健室に行きますよ」
「いや!あの本当にあたし平気なんでっ!」
「…そんなに俺といるのは嫌ですか?」
「なんでそうなるんですかー!」
「畑山とはあんなに仲よさ気にしていて…」
「どうしてそこで恭ちゃんが出てくるんですか…?」
その問いに一切答えないまま、先生はあたしを俵担ぎの格好で保健室まで運んだ。