成瀬一弥についての情報を集めるのには、そこまで時間を必要とはしなかった。


だが、空海についてはわからなかった。


さすがだと言うべきだろう。


空海のことを調べようとすれば、情報がすべて暗号化されていて、読解するのには難しすぎる。


時間をかければ解けないこともないだろうが、なんせ、やる気がない。


知りたい思いはあるが、ここまでして知りたいとは思わない。



「しかし暇だな」



星野財閥以来、乱魔からの予告状はなく、あたしは暇となった。


なにより、乱魔の動きが予測できない。



「そう言えば、乱魔について調べても目的はわからなかったんだよな……」



あたしはパソコンを立ち上げ、また成瀬一弥について調べることにした。


前に調べてわかったのは歳とか、家族構成。


これくらい、あたしが調べなくても警察に頼めば簡単に調べがつく。


つまり、これからがハッカーとしての力が試されるということ。



どこまで奴のことを知れるか。



すべて知ってやる。


あたしは負けないのだから──



「……ちゃん、ちぃちゃん!」



耳元で大きな声で叫ばれたら誰でも耳が痛くなるわけで。



「うるさいぞ、ウサギ」



あたしは耳を押さえながらウサギを睨んだ。



「もう、うるさいじゃないよ。こんなとこにこもりっぱなしは良くないよ。それに、ここ最近なにも食べてないでしょ」



あたしがこもっていたのは、書斎の隅。


暗くて狭いから、あたしのお気に入りの場所だ。


そして、ウサギに言われて気付いた。


あたし、3日くらいなにも口にしていない。



「はい」



するとウサギに板チョコを渡された。



…………チョコ?


ここは普通ご飯らしいものを渡すものだろう。


それが、なぜチョコなのだ。