そして、空海が乗っている車に来た。



「ん?」



乗り込もうとすると、タイヤに寄りかかって寝ている少女発見。


え、これどーすれば…?



「おい、乱魔。なにやってんだよ」



俺がなかなか乗らないから、空海が車から降りて怒鳴ってきた。



「なあ、空海。ここに女の子いんだけど」


「あ?」



空海が俺のほうに来る。



「いつの間に……」



空海は気付いてなかったようだ。



「どうする?」


「どうって……」



珍しく空海が動揺している。



まあそれも無理ないんだけどな。


いかんせん、ここは人目につきにくい。


だから、このまま置いて戻ると、この子はずっとここにいるってことになる。



そうすると、死んじゃうんだな、これが。



「とりあえず連れて帰るか」



今は眠ってるみたいだし。



俺は女の子を抱えて車に乗り込んだ。


空海はなにも言わない。


そのまま、運転し始める。


車の中でもこの子が俺らの会話を聞いてたら困るから、一言もしゃべらなかった。




喫茶店に着き、車を降りると、海が小さな声で言ってきた。



「俺が先に入って滋に説明してくる」


「あぁ、悪い」



あのバカのことだ。


簡単に俺のことを『乱魔』って言いそうだ。


俺は車の中で眠っている少女を見る。



「……天使みたいな寝顔だな」



茶髪の髪は肩の辺りで切り揃えてあって、左目らへんに黒のリボンの髪飾り。


白シャツに黒チェックのスカート。


あとは黒いパーカーを羽織って、肩掛けの大きなカバンを持ってる。


天使みたいなんだけど、なんか格好は悪魔っぽい。


なんでこんな黒ばっかなんだよ。


せっかくかわいいんだから、フワフワの服とか着ればいいのに。