俺は素直に天井からティアラが入った透明なケースの上に降りる。



「珍しく遅刻だな。怪盗乱魔」



部屋には男1人。


腕を組んで1ヶ所しかないドアのとこに立っている。



「ちょっと考えごとしてたんで」



俺は話ながらその男を観察する。



黒髪にメガネ。


パーカーを羽織って、ジーパンを穿いている。


なんとも動きやすそうな格好。



なんか、警察って言うより探偵っぽい。


だけど、こいつが俺と戦えんのか…?



「今回僕は君を逃がすためにここに来た。君とは話がしてみたかったからね」



は?


なに言ってんの、こいつ。



俺と話したかった?


お前は俺を捕まえるんじゃ……



いや、違う。



こいつは自分の意思で動いてねぇ。


右耳に俺と同じような小型無線機をつけている。


つまり、こいつは誰かの代わりってことか…?



「今日はこれで終わりだ。さっさと逃げろ。次からは容赦しないからな。それと、遅刻すんなよ」



男はそう言って部屋を出ていった。



「すみません!乱魔にティアラを取られました!やつはもう外に逃げました!」



あいつ、ホントに俺を逃がす気なのか……



まあ、こんな絶好な機会はない。


俺はケースからティアラを出し、ケースを閉じてその上にまたティアラを置いた。



こうするのにも、ちゃんと理由があんだけど、またあとで説明する。


とにかく今は逃げねーと。


俺はあらかじめ用意していた逃走ルートから逃げる。



「うわ、誰もいねぇ」



みんなあの男の言葉に騙されたのか、外に行っている。


あいつ、何者なんだ……