「乱魔ぁ!」
俺を見つけるたびにそう言って……
いい加減飽きるっつーの。
俺の名前をそんなでかい声で呼んでどうすんだよ。
警察ごときに俺が捕まるわけねぇだろうが。
「毎度毎度……柏木冬馬のモノを狙ってるようだがお前はなにが目当てなんだ?」
今度はラビットの登場か。
あきれたように言ってくれる。
「ガキに言うわけねぇだろ。おとなしく寝とけや」
「あ?」
「聞こえなかったか?帰れっつったんだよ」
わざと挑発してみる。
こんなのにラビットがのってくるわけねぇけど。
「帰るわけないだろう。あたしはお前を捕まえるまで追い続ける」
「ふーん……せいぜい頑張りな。俺は捕まんねぇから」
俺はそう言い捨てて、目当てのモノのとこに向かう。
今日までに盗んだ柏木のものは3つ。
時計にジャケット、それからカバン。
どれも金目なものってわけじゃないが、柏木にとって大切なモノ。
だから、盗む。
今回狙うのは万年筆。
どうやら、それ以上に大切なモノはないらしい。
つまり、俺たちの復讐に終わりを告げるってこと。
ここから先は謎解きタイム。
うまくラビットを使って柏木の罪を暴いてやる。
それが終われば、俺は自首する。
乱魔でいる必要がねぇし。
だから、それまで。
それまでは絶対に捕まらない。
というか、捕まるわけにはいかない。
『万年筆はやつが持っている』
だろうな。
きっと、大切に握りしめてることだろう。
『どうする?』
「あ?そんなの奪うに決まってんだろ。フォロー、頼む」
『了解』
俺は柏木がいるとこまで走る。
後ろから警察が追ってくるが、俺に追い付くわけない。