「おつかれー」
車が止まり、運転手が降りたとこで言った。
「……」
いや、なんか言えよ。
そんな睨むように見てくんなっての。
「悪かったって。今回は」
結成したばかりで解散、なんてシャレになんねーんだよ。
「もっと緊張感持てよ、このバカ」
うぉっ。
口開いたと思ったら暴言かよ!
「バカってなんだよ」
いやいや、俺。
そこじゃねーだろ。
「バカはバカだ」
ほら、怒った。
「空海、ちょっと待てよ」
海はもう一回俺を睨んでそのまま喫茶店に入っていった。
あ、あいつの名前まだだよな。
あれは空海(くうかい)こと、新田海(にったかい)。
冷たくてドSなんだけど、ハッカーとしての腕前はたしか。
世界でトップクラスだろうと思う。
「乱魔?
そんなとこでなにしてんの?」
俺らのたまり場である喫茶店で待ってたのが情報屋のS(エス)。
本名は櫻井滋(さくらいしげる)。
イニシャルがSSになるから、S。
こいつの情報集めの速さはとんでもない。
ホント、どっから手に入れた?って思うくらいのことまで知ってる。
俺、『乱魔』はこいつら2人のおかげで成り立ってる。
感謝、しねーとな。
とか、思うのに、素直に言えねーんだよな。
俺の性格がひねくれてんのか?
いや、俺に限ってそんなことはない……
はず。
「乱魔?早く来なよ」
「ん?あ、おう。今行く」
俺は滋に答えて車の屋根から飛び降りる。