うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜

「あと神田くんじゃないといいなと思って」
と付け加えると、

「なんで?」
と訊き返してきたときだけ、彼にしては、珍しく、少し喧嘩腰だった。

「だってさ。
 神田くん、私の携帯の番号も知ってるじゃん。

 それなのに、その後連絡もなかったってことは、ただの遊びだったってことでしょ?」

 そう主張すると、ぷっ、と彼は笑った。

「相楽さん、誰かと付き合ったことは?」
と訊いてくる。

「な……ないけど」
と言い淀みながらも答えると、だと思った、と言われてしまう。

「ちょっと短絡的だね。
 男女の機微もわかってないようだし」

 そんな高尚なものわかりませんよーだ、といじけていると、神田は、もんじゃ焼きをはがしながら言う。

「いやいやいや。
 そんな、君もよくわかってないような出来事なわけでしょ?

 僕もよくわかってなかったのかもしれないし。

 夢かと思ってたのかもしれないじゃない」