そこに写ったのはアイツだった。
「『ブアメードの血』の実験開始より64分58秒。中村 美世さんの死亡が確認されました。
引き続き堀田くんと眞木さんの観察を続けてください」
中村さんの死を告げるためだけ。
たったそれだけの為だけにアイツは僕らの前に顔を出したのか。
また切り替わったモニターの中にはもうすでに中村さんの姿はなかった。
「ほんと、なにしてんだろうオレ達」
「こんなことならさっさところ…………」
「ざっけんじゃねぇ!!」
亮二の後ろ向きな言葉に怒鳴り声をあげたのは佐野くんだった。
「オレはこんなとこで死ぬ気なんてねぇぞ!!
こんな馬鹿げたことで死んでたまるか。だからてめぇらも!」
佐野くんは塞ぎこむクラスメイト全員に向かって言う。
「最後まで諦めるな!オレらにはなぁ、こんなとこで死ぬ義理も、自分から死ぬ権利なんてねぇんだよ!!」
最後に「けっ」と悪態をついて、佐野くんはその場に座った。
その姿は単純に格好よかった。
「「70分経過しました」」
中村さんの死から経った5分。
その5分がどれだけ長く感じたことか。
「眞木さん、70分出血量は1302.84ccです。
身体に異常はありますか?」
「さむい…………いたい…こわ、い」
ぜーぜーとした呼吸音で、もはや喋っている言葉を聞き取りづらい。
呼吸は乱れていて、ろれつもまわらずこのままだと。
「堀田くん、70分出血量1277.94ccです。
身体に異常はありますか?」
「痛い。足が痛いんだよ!!
目も回るし、気持ち悪いし、おかしいよなぁ、これ。僕なんかおかしいんだよ」
叫ぶような声。
精神の限界が近づいている。



