今までの(というか、健也との)恋愛は、彼にも言われた通りあまり素直じゃない私の性格が災いして、正直にものが言えてなかったなぁと思う。


でもなんだか不思議なことに、少しずつだけど、金子には打ち解けられているような気がして。


ちょっと気恥しいような感覚になっていた。


前に金子が社内恋愛のいいところは「仕事を頑張ってる姿とか、間近で見られる」ことだと言っていた。
確かにそうなのかもしれない。


社内恋愛じゃなければ分からない、仕事中の好きな人の姿。
同僚と話す時はどんなか、上司との関係はどんなか、仕事への姿勢はどんなか、それが手に取るように分かる。


とりあえず一部上場企業だから本命として受けたと、彼は入社式の時に話していたけれど、そうは思えないほど楽しそうに生き生きと仕事をしていた。


どちらかと言えば上に認められたい気持ちが強く、そのために仕事に打ち込んでいた健也。

お客様の立場に立って考えて、お客様のニーズに一番近いものを気持ちよく買ってもらえるように工夫する金子。


どちらも最終的には目標売上の達成が背景にあるけど、根本が少し違う。
どっちが良くてどっちが悪いなんてことはない。正解なんて無い。


それでも私は、金子のやり方の方が好きだと思っていた。