翌日。
私は朝から苦悩していた。
昨日の夜、金子に何を言ってしまったんだ?
「金子くんも、合コンに行かないで」
え?え?
なにそれなにそれ!
なんかもう、完全に「好きです」っていうの言ってるじゃない。
行かせてやりなさいよ、合コンくらい。
健也と付き合ってた時なんて、女友達と飲みに行こうが帰りが遅くなろうが大して気にも留めなかったのに。
付き合ってすらいない金子にあんなことを言うなんて、これは重症かも……。
くぅぅぅ、とひとりでデスクで頭を抱えていると、ポンと後ろから肩を叩かれた。
勢いよく振り返ると、悩みの相手でもある金子本人が立っていた。
「わぁ!……お、お、おはようございます」
「おはよう、綾川さん」
彼はいつものように穏やかに微笑んで、手に持っていた書類を私のデスクに置いた。
「昨日出してもらったポップ案とレイアウト案、承認出して部長にも通したから。早速みんなに仕事振って午前中のうちに準備しておいて」
「はい、分かりました」
ほらね、と返事しながら思う。
仕事中の金子は頼りがいのある顔つきをしている。
冷たすぎず優しすぎない、ちょうどいい温度の口調でどんどんやることを指示してくる。
2人でモジモジしていた昨日の帰り道が嘘みたいに。