「彼女の円香」
「初めまして七瀬円香と申します」
両親の居る応接間に通され
2人を目の前にまずは
自己紹介。


就職試験でもこんなに緊張して
ガチガチになったことがない。


「まーまー座って座って
そんなに固くならないでいいわよ」
あたしの緊張が目に
見えてわかったらしく
お母さんは優しく微笑んだ。


「何?お前たち 結婚でもするのか?」
お父さんはあたしたちが座った途端に
そう聞いた。


「あ〜まぁ そー言うこと
よくわかったな」


「お前が親 っていうかこのワシに
彼女を紹介するってことは
結婚しかないだろ
お前ももういい年だからな
で?相手の七瀬さん?
君はいくつなのか?」


「あたしは24歳になりました」


「若く見えるな
学生かと思ったよ」


お父さんの言葉に一瞬笑いに包まれた。


「親父!それは言い過ぎ」


「付き合ってどのくらいなんだ?」


どう答える?
正式に付き合い始めたのは先週
それなのにもう結婚?
ふざけるな!って
怒鳴られるかもしれない。


あたしはそれを覚悟した
が主任が答えたのは
「1年半」
主任が嘘をつくのを見たのは
初めてのことだ。


なぜ嘘をついたか
後で教えてくれたけれど
やはり主任もあたしと同じ考えで
昨日今日付き合い始めて
お互いのことがわかるわけないだろ!
とうるさく言われると思ったらしい。