最後のデザートも終わり
そろそろ帰ろうかという時だった。


「円香」


目の前で真剣な顔をして
あたしの名前を呼んだ。


「は・はい」
なぜか緊張のあたし。


「これ」


テーブルに出したのは
白い包装紙で包まれ
赤いリボンが付けられた小さな小箱。


「うん?なに?」


「開けてみて」


手に取りリボンを解いた。


丁寧に包装を剥ぎ
紙を小さく折りたたんだ。


そして その箱を開けると
ピカピカと光った指輪があった。


「これ・・・」


「改めて言う!
円香結婚してくれ
あっ!じゃなく結婚しよう」


思いがけないプレゼントに
ポタポタと涙が落ちてきた。


「本当にいいの?
なにも取り柄のないあたし
本当に迷惑じゃない?
子供ができたからって
無理してない?
もっともっといい人が
いるかもしれないのに
後悔しないの?
それにそれに」


続くあたしの言葉を
「それ以上言うと怒るぞ!」
と主任が止めた。


「こんなのいつ用意してたの?」


「それこそ
円香を迎えに行く前
だからサイズが合うかどーか
それは不安
貸してみて つけてみるから」


指輪を手渡し 自分の手も差し出した。


「緊張して手が震えちゃう」
ブルブルと震えるその手を
主任は「なに震えてんだよ」と
笑いながら取り左手薬指に
そっとその指輪をつけた。


それは計ったかのように
ぴったりだった。


これは何かの夢?
まさか夢じゃないよね?
自分の頬をポンポンと叩いてみる。


「痛い・・・よね・・・」


「なにしてんの?」


「夢かな?って
こんな幸せある?
現実じゃないんじゃない?って」


「それでどうだった?」


「現実だった あはは」


笑ってごまかすあたし。


「あはは じゃないよ!
返事は?円香は昼間から
いいの?あたしでいいの?って
聞くばっかりで返事してないよな?」


「あ・・・うん
そーだね・・・」


あたしは背筋を伸ばし
緊張しながらも


ーーーこんなあたしで良かったら
よろしくお願いしますーーー


そう答えた。