あのとき、どうして君があんなことを言ったのか、ずっと考えていたけれどわからなかったんだ。でも今は少しだけ、わかる気がするよ。
僕はあのとき、君に何て返せばよかったのかな。もしも僕が君のことを嫌いじゃないって、そう言っていたら何か変わっていたんだろうか。君は今もここにいたんだろうか。そんなことを考えても意味がないことはわかっているけど、だけど、どうしても考えてしまうよ。
夜眠りにつく前に。朝目が覚めたときに。
僕は今日もまた、君がいた頃と同じように過ごしているよ。だけど最近少し、ほんの少しだけ、愛想笑いが下手になった気がするんだ。でもまぁ僕は器用だから、またすぐに上手くなれると思うけど。
君がいなくなっても、この世界は何も変わらなかったよ。まるで君なんて最初から存在していなかったみたいで、僕は今でも時々、あの非常階段に行って確認するんだ。何も特別なことのない、不安や葛藤を少しだけ形にできただけの場所に。だけどそれでも確かに君はここにいたんだって、本当に、時々だけど。
最後に、これは独り言だけれど、僕はあの吐きそうなほどに色鮮やかなオレンジだとか、君の長い黒髪だとか、最後に君が言ったありがとうだとか、その涙声を、微笑みを思い出すたびに、あぁ、あれが恋だったのかもしれないなと、そんな仕様もないことを考えるんだよ。
そんなこと君は、
【仕様もない話】
(君は知らないだろうけど。)

