「波瑠……?」

なぜか私の目からは涙が流れていた。


だって先輩とこんなキレイなものを見れたことが嬉しくて。感動して泣くなんて初めてだ。

そんな私を見て先輩はそっと指で涙を拭いてくれた。

「す、すいません……」と慌ててしまったのは先輩の指が顔に触れて動揺したから。

なんの躊躇もなく触れられた。
こんなの反則だ……。


「あ、波瑠が謝った。じゃ、罰ゲームね」

忘れてたけど、そういえばそんな話もしてたっけ。


「ちょっと待ってください!い、今のはビックリしただけで……」

「ダーメ。約束したもんね」

先輩の無邪気な顔。

こんな表情もするんだな。今日は初めてのことばっかりだ。


「うーん。どうしようかな?」

「痛いのとか苦いのはやめてください……」

先輩は優しいから嫌な罰ゲームはしなそうだけど……でもなんか楽しそうだし。先輩の中に眠るS心に火がついちゃったら私……。


「じゃ、波瑠は俺に敬語を使わないっていうのはどう?」

「え……え?」

思わず聞き返してしまったけど今なんて……。


「だから今から敬語はなし。ね?」

「ね?と言われましても……」

まさかそれが罰ゲーム?そんなの罰ゲームとして成立するの?

先輩に対して敬語なしとかそんなの……罰でもなんでもないよ。


「電話もメールもなしだから。使ったら今度は痛いのするかもよ?」

「ま、待ってください!せ……先輩は先輩だし、そこにタメ口だとなんか違和感が……」

「じゃ先輩はやめて亜紀にする?」

「!!」

「うん。亜紀にしよう。俺も波瑠って呼んでるし、だったらタメ口でも違和感がないでしょ?」


本当に今日は初めてのことが多すぎる。


敬語からタメ口になって、先輩から亜紀になって。

望遠鏡で見た宇宙みたいに、どんどん気持ちが吸い込まれていく。



もしも生まれ変われるのなら、私はキミと星になりたい。


例えそれが何億光年と離れていても。

例えキミに触れることができなくても。


何十年、何百年、何千年、何億年と変わらず隣にいてくれれば、どこだってそれは幸せな場所。