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通いなれたはずの道は2年前となにも変わってなくて、白い外観に緑色の屋根。
インターホンを押す人差し指がわずかに震えてしまったけど、私は意を決してピンポーンと鳴らした。
……ドクンドクンドクン。
家の中からバタバタと足音が聞こえてきて、スピーカーからは亜紀のお母さんの声。
『はい』
今さらだって思われるかもしれない。
2年間こなかったくせにと追い返されるかもしれない。
それでも私はここに来た。
『……波瑠です』
小さくそう言うとお母さんの声色が変わった。
『は、波瑠……ちゃん?』
またバタバタと慌ただしい音がして、すぐにガチャリと玄関のドアが開いた。
そこから裸足のまま出てきたお母さんはまだ目を丸くさせている。直接顔を見たのは本当に久しぶりで、それなのに私は申し訳なくて顔を上げることができない。
すると、お母さんは私の手を掴んで「中に入って」と言ってくれた。
家の中は相変わらずとてもキレイで、当たり前だけど亜紀の家の匂いがする。もうそれだけで胸がいっぱいになってしまって、お母さんはリビングでお茶を出してくれた。
コトッ……と、湯飲み茶碗がテーブルの上に置かれる。
私はソファーには座らずに床に座っていて、お母さんがおぼんを下げたタイミングで口を開いた。
「お、お母さん……。今まで一度も顔を見せにこなくて本当にごめんなさい。本当に本当にごめんなさい……」
亜紀のお母さんは私に何度もメールをくれた。
【大丈夫?】【風邪には気をつけてね】って。
だけど、返す心の余裕もあの頃はなくて。
だから突然、家にきた私を見てビックリしたのは当然だ。むしろ家の中に上がらせてもらっただけでありがたい。



