高校生活も1週間が過ぎ、この通学路にもやっと慣れてきた。唯一文句があるとしたらバスが学校前ではなく、この長い坂道の下で停車することと、あとひとつ。


「ねぇ、ついてこないでくれない?」


帰り道。坂道を下りながら私は後ろを振り返った。


「ついてきてねーし。俺も同じバスなんだよ」

「………」


夏井とはなるべく関わらないようにしてるのに、なぜか夏井は私に関わってくる。お菓子を食べてると「食う?」と差し出してきたり、私が机に向かってると「なにしてんの?」ってわざわざ聞いてきたり。

夏井はこの明るい性格から、やっぱりクラスの中心的存在になっていて騒がしい場所には決まってコイツがいる。


「じゃなんで見計らったように私が教室を出るタイミングで夏井も出たわけ?」

「そんなの気のせいだろ」


気のせい?

そう思ってわざとゆっくり歩いて、いつも乗る時間のバスを諦めて夏井が追い抜いてくれるの待ってたのに、さらに夏井は亀のように歩くし本当になに考えてるか理解できない。


「つーか雲行き怪しくね?なんか雨降りそう」

そうだよ。だから早く家に帰りたかったのにバスを諦めたせいで次は30分後とか、こんな何もない場所でどうやって暇潰せばいいの……。


とりあえずバス停に着いたけど、何度時刻表を見ても結果は同じ。その間夏井は懲りずに私に話しかけてたけど、迷惑そうなオーラをだして無視した。