河川敷ではカルガモの親子が仲良く川の上を泳いでいた。

キラキラと夕日が水面に反射して、少し傾斜のある土手の上に夏井は座った。


――『ねぇ、答えて。なんで夏井がそれを着てるの?夏井はだれ?だれなの?』

『俺は……』


あのあと夏井は考えるように無言になった。そして予定をキャンセルしてこの場所に移動してきたのはいいけど、さっきから夏井は黙ったまま。

そんな夏井を見てずっとイライラしてるけど、それ以上に夏井が亜紀のウインドブレーカーを着てることが許せなかった。

それは亜紀のものなのに。
亜紀だけのものなのに。


「夏井は亜紀と知り合いだったの?」

先に聞いたのは私だった。

たくさんたくさん疑問はあるけど、まずはここから。


「うん」

夏井の返事はそれだけ。また苛立ちが増す。


「うん、だけじゃ分からないんだけど」

いつも口だけは無駄に動くヤツなのに、こんな時に限ってその口は重い。急かす私を見て夏井は渋々話はじめた。


「塚本先輩とはフットサルのチームメイトだったんだよ。サッカー仲間の繋がりで誘われて」

「それっていつの話?」

「4年前。春風は先輩が中学2年の時に作ったチームで。俺は当時まだ小学6年生だった」


4年も前……。

ってことは私と亜紀が出逢う前から夏井は亜紀と知り合いだったってこと?


「じゃ、私と亜紀の関係も知ってたの?」

亜紀のことを知る私に夏井は一切疑問を持たなかったし、4年前から春風にいたのなら私の姿も目撃していたはず。


「知ってたよ。先輩は彼氏で藍沢は彼女だった、関係だろ?」

だった、と言われて胸がざついた。