100万回の祈りをキミに




昼休み。凪子はバド部の友達と昼食を食べるらしく、今日は教室で安藤さんとお弁当。


「私一番前の席になっちゃった。藍沢さんは楽しそうな席でいいね」

それは夏井の隣でいいねって意味だろうか。

夏井のこと気になるって言ってたし、できるなら交換してほしい。


「この動画めっちゃヤバイ。夏井見てみて」

「お、マジか。でも俺タイプじゃないわ。お前はロリコン好きだからなぁ」

「はぁ?童顔は好きだけどロリコンじゃねーし!」

しかも食欲の失せる話ばかり。

隣の席じゃ聞きたくない話まで聞こえてきちゃうし、次の席替えはいつだろう。

3学期だろうな……。


「なぁ、その弁当って自分で作ってんの?」

購買のパンを食べていた夏井が私たちに話しかけてきた。


「あ、私はお母さんが。そんな女子力高くないし。ね?藍沢さん」

「……まぁ」

私に話を振らないでほしい。夏井に話しかけられた安藤さんはすごい嬉しそうだったけど、私は自分のお弁当に入っているニンジンしか見ていない。


……お母さん、またニンジン入れたんだ。嫌いだって知ってるのにわざと入れるんだから……。

私はおかずの付け合わせに盛りつけられていたニンジンを箸でそっと避けた。


「もしかして藍沢ニンジン嫌いなの?」

「え、」

……一瞬だったのに見られていたのか。


「べつに」

「いや、嫌いじゃん。箸で避けたじゃん。ニンジン嫌いなんて藍沢は子供だなぁ」

関わらない、近づかないと呪文のように心で唱えたけどダメだ。ケラケラ笑う夏井を見てムスッと不機嫌になってしまった。
   

「残すなら俺が食ってやるよ」

そう言って夏井は勝手に私のニンジンを口に入れた。