「あいつは僕が話しかけても聞こえてないから、お前の口から話すことになる。
別に僕はそれでもかまわないけど、あいつの方はショックで心が壊れるだろうな」

「………」


蒼ちゃんには言えない。
でもわたしのお年玉だけじゃ、あと2万足りない。

お金が足りなきゃ、父親探しが進まない。
早く探さなきゃ、いつまでもホタルが消えてくれない。

……結局、背に腹は代えられないってことなのか。

わたしは「んん~~~」と長く唸り声をあげた末に、覚悟を決めて宣言した。


「しかたない。それで東京に行こう」


蒼ちゃん、ごめんなさい! 
絶対すぐにバイトをして返すから許してください!

心の中であやまったそのとき、背後で引き戸の音が鳴った。


「何してるんだ、お前」


ドスの聞いた低い声に、一瞬にして心臓が冷え固まった。

おそるおそるふり返ると、眉を吊り上がらせたおじいちゃんが玄関を出てくるところだった。