ひたすらに日常を壊さないようにとそればかり考えて、穏やかな関係を崩すのを惜しんだ、臆病な俺。


へらりと被る仮面の下での不恰好な葛藤に気付かないふりをして、あいつももの言いたげに黙っていた。


二人とも何も言えなかった。


距離を詰め損ねたら、それこそ嫌われてしまう予感がして。


今の関係が崩れたら嫌だし。

大丈夫大丈夫、どうせこいつに彼氏なんかできないと思うし。

ぎくしゃくしてしまうよりかは、きっとこのままの方がいい。


……そんな、後付けの言い訳を重ねて思いに蓋をした。


俺たちは幼かったのだ。


別れを知らなかったのだ。


想像はしてみてもいつも曖昧で、そのまま、まあきっと何とかなるようになるんだろう、なんて軽く考えていたのだ。



だから。


高校卒業の日、俺たちは、何も言わないまま離れた。