事件は何日か後にやってきた。
「春子、宗太郎が見当たらんのよ」
焦って部屋にやってきたおばあちゃんの声に、私も目を見開いた。
「え、」
もうお風呂に入って寝ようかと言うところ、
宗太郎とちょっとした姉弟喧嘩みたいになってしまって、先にお風呂に入っていたのだけど、
「おばあちゃんちょっと周り探してくるから、春子は豪太のとこいって、一緒にお願いしてくれへん」
「どうしよう私のせいだおばあちゃん」
「どうしたっていうん」
「宗太郎が海を見たいっていうから、もう少し大きくなってからねって言ったら、宗太郎だだこねて、」
でもでも海を見に行くには山を越えなければならない、
まだ幼い宗太郎には無理なのに、もう小学一年生だと言い張る宗太郎と、そのことで喧嘩になってしまったのだ。
「そんなことがあったん」
「どうしようおばあちゃん」
「困った宗太郎やねえ、とりあえず、宗太郎が山の方に行く前に見つけなねえ」