「三郎坊のところへ行きなさい、お前も修行を積んで眷属神になったほうが、このご時世についていけますぞ」
手に職の時代ですからな
次郎坊がそう言うと、狐はブルッと体を震わせて縁側からピョンっと空へ、飛んでいった。
静かになった部屋、蚊帳の外にいる次郎坊。
宗太郎は、なにも知らないで寝息を立てていた。
「ありがとう次郎坊、来てくれて」
ゆっくりと蚊帳を上げて、次郎坊の元に行こうとすると、
次郎坊も私の方に向き直り、蚊帳を持ち上げる私の手に自分の手を重ね、もう一方の手で、
うさぎのお面を少し持ち上げた。
見えるのは次郎坊の口元だけ
ニッと笑って、
「お安い御用です春子殿。明日から修行でしょう、もう安心してお眠りなさい」
次郎坊はそう言い残して部屋を去って行った。