「あなたの嫁には、向かないと思う」
ほんとに!
どうしていいかわからず、背中に宗太郎を隠してギュッと目を閉じた。
「お主が春子殿にマーキングした妖狐か」
どこからともなく現れたのは、
うさぎの面をかぶった、次郎坊だった。
「次郎坊!」
次郎坊は私達の目の前に立て膝ついて、狐を睨んでいた。
ただの野うさぎより、修験者のあなたの方が随分頼りになる!
「春子殿、これ今カッコイイというやつではありませぬか?」
「うん今の今までかっこよかったけどその一言で台無しだよ!」
あらま、落胆する次郎坊は、手に数珠を巻きつけて、妖狐に向けた。
「気を消したな眷属見習い、狐よりずる賢いやつじゃ」
狐が毛を逆立てるのがわかる。
「それほどでも!人間に悪さをする妖怪は、玄徳坊眷属見習いとして、私がここで成敗してくれよう」
声を張った次郎坊は、手から、数珠を放った。
蚊帳を飛び越え、大きくなった数珠が、妖狐の体に巻きついて、
そして姿をハッキリ見せる妖狐、
白い髪に白い着物、ピンと立った耳につり上がった目、半分人で半分狐
本当に本で見るようなその姿に、目を疑った。
「己天狗の眷属見習いのくせに!」
苦しそうな妖狐は、たちまち小さくなって、
「くぅん…」
唯の狐になってしまった。
「わ、」
見れば私の手のひらの傷も無くなっている。