宗太郎を抱きかかえて、私はとにかくこの場を離れないとという一心に駆け出した。
次郎坊の制止なんて一つも聞こえないで、生まれて初めてみる猪の大きさとかもう何から何までびっくりしてしまって、
歩いていた道を戻るように走っていく、
「お姉ちゃんいまのなに!」
「いのしっ…きゃあ!!」
ビターンっと勢いよく木の根っこに引っかかって獣道の真ん中で躓いてしまった。
宗太郎はなんとか死守
「姉弟揃って無茶しいというか、なんというか、危なっかしいのう」
ぴたりの風が止んだみたいに、森の時間が止まったみたいに、静かな中、響くような声が聞こえた。
「玄徳様だ」
宗太郎が、私を気遣いながら、ゆっくりと身を起こす。
私も続いて、思いっきり顔からこけたので、頰の砂を払いながらなんとか上半身だけでも起こした。


